[Formula Student]上智大学 学生フォーミュラチーム、古豪復活への第一歩 – 2024大会レポート

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Formula Student team of Japan.
This team is the “Sophia Racing”.
They competed in the EV class.

上智大学 四谷キャンパス を拠点に学生フォーミュラへ参加する Sophia Racing

学生フォーミュラ初代チャンピオンであり5度の総合優勝を誇るチームだが、2012年を境に長い低迷期に入る。
そんな中でも懸命に活動を続け、2019年には総合11位まで回帰。
コロナ過明けの2022年、2023年大会では青山学院大学と合同チームを結成。
EVクラスに移行するなど、新たな挑戦にも取り組んできた。

そうして迎えた2024年は、原点回帰とばかりに上智大学単独での参加を表明。
逃し続けている動的審査での完走を果たそうと、勇躍、愛知スカイエキスポへ乗り込んできた。

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昨年までの悔しさもあってかメンバー全員の士気は高く、活動もかなり熱を帯びていたと聞く。
そうした状況の中で生まれた今年度のマシン「SR20」。

プロレーシングカーにもひけをとらない、洗練されたエアロスタイルを纏っている。
それだけでなく、誰が見てもカッコいいと思ってもらえるよう、カラーリングにも拘りあり。
その効果は抜群で発表以降、他チームからも注目を集めていた。

最大の特徴は、昨年から採用されている独自のアルミモノコック。
コスト削減と制作性の向上を目的に採用されたが、シャシー剛性や重量など、トップチームで採用されているカーボンモノコックと比べても遜色ないという。
重量配分も、リアヘビーだった昨年から大幅に改善されている。

ホイールベースも大きく短縮されており、それによる旋回性能の向上度合も気になるところ。

肝心のEVシステムは昨年と同様ながら、安定したパフォーマンスを発揮できるよう細部に渡って見直しを図ってきたようだ。

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小さい子供に、コクピット試乗をサービスする一面も

事前のテスト走行では好調さが伝えられていたが、果たして本番は?
今年の Sophia Racing を振り返ってみよう。

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静的審査(※カッコは2023年の順位)

  • プレゼンテーション:24位(37位)
  • デザイン:27位(59位)
  • コスト:69位(62位)

静的総合:38位(59位)

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動的審査(※カッコは2023年の順位)

  • アクセラレーション:31位(-位)
  • スキッドパッド:8位(-位)
  • オートクロス:41位(-位)
  • エンデュランス:27位(-位)
  • 効率:1位(-位)

動的総合:21位(-位)

総合:24位(56位)

昨年から大きくジャンプアップ。
EVクラスでも4位に入るなど、大躍進の結果となった。

まず静的審査だが、コストで減点があったもののプレゼンでは10位、デザインではなんと20位近くジャンプアップしている。

実は以前、このチームの新車発表会に訪れた事があるが、そこで好印象を抱いていた。
当時、マシンに対する質疑応答の時間が設けられていたが、例えば「なぜこのような設計をしたのか?」という問いに対し、その狙いからメリット、デメリットまで具体的な返答が返ってきた。
マシンコンセプトや狙い、各部の役割を理解しないと到底答えられない内容であり、説明自体も納得のいくわかりやすさだった事を覚えている。
それだけに、今回の成果は納得のいくものだった。

ただ、チームとしてはプレゼンテーションも上の順位を狙っていた様子。
まだまだ反省すべき点は多いと語ってくれた。

そして動的審査。

元々スキッドパッドをターゲットにマシンを制作してきただけに、アクセラレーションは完走できれば御の字。
そのスキッドッドでは、狙い通り見事な旋回性能を発揮。
全体で8位のベストタイムを記録している。

ちなみにEVクラスを優勝した名古屋大学の昨年タイムを上回っており、この結果にチームメンバー全員、喜びの声をあげていた。

オートクロスでは2回目の走行中、トラブルでストップ。
不運に見舞われたものの、同じ事が起きないよう万全の対策を施したエンデュランスでは、安定した走りで20周を走り切り完走達成。
なんと電力消費量でも100点満点で見事1位となり、さらに総合順位を押し上げる結果となった。

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完走という当初の目標を達成した Sophia Racing 。
EVクラストップチームと遜色ない走りを見せるまでになっており、早くも翌年が楽しみになってくる。
今年度で主軸となったメンバーが5人抜けるとの事だが、ギリギリまで後輩達に引継ぎを行っていくという。

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今回、日本自動車工業会会長賞、省エネ賞、スポーツマンシップ賞、最軽量化賞を受賞。

そんな先輩達から、最後にこのようなコメントを頂いた。
「ここ数年、完走出来ず悔しい思いしてきましたが、ここにきて完走という目標を達成できたのがとても嬉しかったです。チームの皆、本当にありがとう!!」
「これで完走できる基盤が出来たと思っています。ここからレベルアップを果たしていき、再び優勝を狙えるよう努力していってほしいです。頑張れ!!」

【取材・文】
編者(ものシンク
【取材協力】
公益社団法人 自動車技術会
Sophia Racing