
学生フォーミュラ に参加する Shizuoka University Motors(以下、SUMと呼称)。
静岡大学 浜松キャンパスを拠点とする同チームの昨年は、EVクラスへの移行後、初の動的審査進出を達成。
残念ながらエンデュランスで途中リタイアしたものの、今後に向けて大きな一歩を踏み出した。
新ステージの愛知スカイエキスポでは初完走が期待されたが、今年は試練が待ち受けていた。
その様子をお伝えしていく。
静岡大学 SUM チームのマシン
洗練されたエアロスタイルと、昨年とはまた違った艶やかなカラーリングが目を引く今年のマシン「SE-124」。
昨年型を見直し、軽量化をコンセプトに運動性能の向上を目指して開発された。
マシン諸元を見ると、全高とホイールベースが100mm以上短くなっており、前後トレッドが100mm近く拡大しているのが目につく。
車重は前年モデルが282.7kg、今年は260kgと数値上 約20kgの軽量化となっているが、実は前年表記は謝りで、実際は300kg近くあったと言われている。
またリアヘビー傾向だった重量配分も、幾分フロント寄りに緩和されているようだ。
さらにタイヤのリム幅も大きくなっており、コンパウンドも固めに変更されている。
主なEVユニットは昨年と同様のようだが、各部の最適化を行いつつ、SUM Tronic TCS なる新機軸を追加するなど新たな試みも見られた。
シェイクダウンは予定より遅れ、大会2週間前に完了。
一抹の不安を残したが、その様子を見るかぎり速い旋回性能を発揮するなど、愛知スカイエキスポでの活躍が期待された。
では、今年のSUMを振り返ってみよう。

静的審査(※カッコは2023年の順位)
- プレゼンテーション:24位(29位)
- デザイン:27位(16位)
- コスト:69位(58位)
静的総合:38位(30位)
動的審査(※カッコは2023年の順位)
- アクセラレーション:-位(19位)
- スキッドパッド:-位(23位)
- オートクロス:-位(25位)
- エンデュランス:-位(27位)
- 効率:-位(4位)
動的総合:-位(23位)
総合:48位(21位)
残念ながら動的審査に進出できず、順位を大幅に落とす結果に。
これにはリーダーはじめメンバー全員、重い表情を浮かべていた。
同チームは個々の技術やメンバー全員のモチベーションは高く、広報や対外折衝に向けた取り組みにも積極的で企業側の評価も高い。
特に後者は、プレゼンテーションの評価にも繋がっている。
また昨年の完成度を見ても技術レベルが落ちたとは考えにくく、実際、機械車検は全て通過しており、4行程あるEV車検のうち、3つ目までは通過しているのだ。
何があったのか?
その要因を伺ったところ、今年度に向けた動きだしが遅かった事、全体のスケジュール管理を上手く行えず遅延が発生してしまい、全ての作業が後手後手にまわった事をあげてくれた。
さらに現地では、要である動力バッテリーにトラブル。
なんと全く充電できなくなり、その影響で最後の車検行程でNGとなってしまった。

お話を聞く限り、人、機械、技術のマネジメントとバッテリーのマイレージ管理で問題があったように感じた。
何事もスケジュール通りやれていたら上手くいくはずと作業するものの、人の問題、機械の問題、技術の問題、スキルの問題が複雑に絡み合う事で、前回は上手くいったのに何か一つ変えただけでおかしくなる事がある。
そしてマイレージ管理だが、これはプロでも難しい要素と言える。
自動車レースを例にあげてみよう。
レーシングカーに使われている部品の多くは1レース、または数レース走りきって壊れる耐久性を持たされており、そのぶんパフォーマンスに振った設計がなされている。
ファンの方なら、勝利目前にマシントラブルでストップという状況を思い出してほしい。
これらはドライバーのミスもあるが、耐久性の計算やマイレージ管理が狂った場合に起こる事もある。
ならちゃんとやれば?となるが、無数の不確定要素から最適解を導きだすのは至難の業。
頻繁に交換できればいいが、そうなるとコストや入手性の問題が加わってくる。
どこでバランスを取るか?、担当者は日々悩ましく感じているはず。
プロでもこうなのだから、学生なら なおさら厳しかったに違いない。

既にチームは翌年に向けて走り出している。
激化するEVクラスにおいて多くのチームが台頭しつつあるが、SUMチームの最優先は確実に完走するマシンの制作だろう。
今年の経験、悔しさを忘れないよう、ぜひリベンジを果たしてほしい。
【取材・文】
編者(ものシンク)
【取材協力】
公益社団法人 自動車技術会
Shizuoka University Motors