20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_01

学生フォーミュラ に参加するフォーミュラSAE北海道チーム(以下、FHTと呼称)は、北海道大学 工学部R309を拠点に活動している。
毎年、北の大地で孤軍奮闘しながらレーシングマシンを開発し、参戦を続けている。
近年は総合でも上位に顔を出すほどの実力を見せているが、果たして新会場となる愛知スカイエキスポではどうだったか?
その様子をまとめてみた。

20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_10

チームでは昨年の大会終了直後から、翌年に向けたミーティングを実施。
そこで、設計意図をしっかり明確にする事が話し合われた。
こうする事で、そうした考えを持ってのマシン作りが出来るようになり、翌年以降にも繋がる確かなデータが残せるようになった。

しかし制作の遅延を招いてしまい、シェイクダウンは数か月遅れ。
そのためセッティング作業も最低限の事しか行えなかったらしく、その口ぶりから「もう少し時間があれば。。。」という思いが垣間見えた。
またチームマネジメントの面でも、メンバーは増えたものの作業の割り振りや役割の配置が不十分という反省もあったようだ。

20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_03
20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_02

フォーミュラSAE北海道チーム のマシン

そうして完成なった今年のマシン「FH-18」は、チーム史上初のフルエアロを搭載。
カラーリングも昨年話題のキムワイプカラーから、雪をイメージするような純白をベースに、テーマカラーの緑とシルバーがあしらわれている。

昨年と今年の諸元を比べてみたが、エアロ搭載の影響からか全体的に細長な印象を受ける。
ホイールベースも伸びており、重量配分は後ろ寄り。
サスペンションでは、フロントをプルロッド方式に変えてきた。

エンジンは吸排気系の見直し行い出力をあげてきたが、その影響からか燃料タンクの容量もアップ。
にも拘わらず車重を昨年と同じに留めており、軽量化もかなりやり込んできた事が窺える。

さらにエアシフターによるパドルシフトを搭載。
タイヤもコンパウドを変更。
サイズもリアのリム幅を拡大するなど、その変更範囲はかなりの規模となっている。

では、今年のFHTを振り返ってみよう。

20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_04

静的審査(※カッコは2023年の順位)

  • プレゼンテーション:54位(13位)
  • デザイン:19位(42位)
  • コスト:34位(43位)

静的総合:33位(36位)

20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_05

動的審査(※カッコは2023年の順位)

  • アクセラレーション:11位(21位)
  • スキッドパッド:26位(25位)
  • オートクロス:16位(21位)
  • エンデュランス:12位(19位)
  • 効率:20位(15位)

動的総合:15位(17位)

総合:17位(21位)

チームでは当初の目標として総合15位以内を掲げていたが、今回の結果を見てチームリーダーは、率直に嬉しいと語ってくれた。

20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_09

まず静的審査では、デザイン順位のジャンプアップが目を引く。
これは、前述の設計意図の明確化が効いたようで、審査員に対してマシンと各部の目的、意図などがしっかり説明できたという。
とはいえ100%ではなく、エアロやサスペンション周りで不十分だったところがあり、それさえなければ、さらなるポジションアップが出来たかもしれない。

コスト順位もアップしているが、こちらは昨年とほぼ同じという結果に。
以前、遅延提出で減点をくらったため、今年はそれがないよう10点以上のスコアアップを目指して準備を進めていたが、残念ながらペナルティをくらい後退。
去年なみに落ち着く事となった。

プレゼンテーション順位が大きく落ち込んだのが気になるが、これは審査の概要、ポイントを正しく把握していなかった事が原因。
昨年13位と好結果だっただけに、その時のノウハウを生かせなかったのがもったいない。

20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_06

そして動的審査だが、車検は順調に通過。
迎えたアクセラレーションでは、昨年のタイムを更新して11位にポジションをあげてきた。
実はこの時、シフトチェンジの点火カットが不調で、ファーストドライバーにそのままアタックさせていたらしい。
もしマシン状態がよければどうなっていただろう?

スキッドパッドは僅かに順位を落としたが、タイム自体は昨年から更新している。
しかしチームとしては「定常走行性能」の向上を目指して開発していただけに、この結果に不満を持っていた。
その要因として現在の車重をあげていたが、まだまだ軽くする余地を残しているようだ。

オートクロスでは、昨年よりタイムを落としたものの16位に浮上。
しかしこの時、路面の起伏でフロントウイングが接触するトラブルがあり、その対策の影響でウイングが上手く機能しなかったという。

最後のエンデュランスは完走に徹した走りに終始。
昨年よりタイムを落としたものの、順位を12位にあげてきた。
昨年課題となった熱問題も、対策してきた事で特に問題にはならなかったようだ。

残念ながら効率で順位を落としたものの、エンデュランスでの好走が効いた事で昨年よりポジションを3つあげる結果となった。

20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_08

終わってみれば、参加台数の増加に関わらず20位以内に入った今回の結果。
本州勢と比べて他校との交流がやりにくい事、情報が伝わりにくいという現在の状況を考えると快挙と言える。
そういえば現地では、北海道では未経験な気温、湿度に悩まされ、体調を崩したメンバーもいたという。

そうした事を乗り越えたからだろうか。
リーダーもメンバーも、疲れと嬉しさが入り混じった表情を見せてくれた。

20240929_北海道大学_学生フォーミュラ_愛知スカイエキスポ_07

既にFHTは来年に向けて始動している。
愛知スカイエキスポでの貴重なデータを得た事で、今年あがった課題、問題をどこまで解決してくるか?
どこまで最適化させてくるか注目したいところ。
トップテン入りも狙える実力を見せているだけに、本州勢もウカウカしていられない。

【取材・文】
編者(ものシンク
【取材協力】
公益社団法人 自動車技術会
フォーミュラSAE北海道チーム