20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア
総合3位の大阪大学

学生フォーミュラ 2025大会が今年も愛知スカイエキスポ特設会場で開催された。
昨年と違い気温は控えめだったものの、運悪く秋雨前線の影響を受ける事となった大会ウィーク。
雨は降るのか?降るならいつなのか?雨量は?
天気予報も読みきれない中で行われた大会の模様をお伝えする。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_14
20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_2

2025年大会は9月8日(月)から9月13日(土)の計6日間で開催された。
例年通り最初の3日間は主に車検に当てられ、動的審査は残り3日間での実施に。

昨年と違うのは静的審査で、これまでのオンライン審査から全項目、現地でのリアル審査に変更されていた。
ただ車検や動的審査と並行して実施されるため、特に4日目などはハードワークだったようだ。
というのも、その日は全チームがなんらかの審査、車検に参加するようになっていたが、今年は現地参加チームが昨年から83に増加。
それらを1日でマネジメントする必要が出てきたからだ。
今後参加チームが増える事になるなら、スケジュール自体の見直しが図られるかもしれない。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_3
福井工業大学の車検風景
20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_10
横浜国立大学も6年ぶりの完走

驚かされた事がある。
それは、車検通過とエンデュランスを完走したチームの増加で、車検は昨年の48から64へ。
エンデュランス完走に至っては、昨年の29から49へと大幅アップしている。
コロナ過直後、チームによっては活動が一旦リセットされるなど苦しい状況が続いていたが、ここ数年の実戦経験やチーム間の交流、定期的な模擬車検会の開催でノウハウが溜まってきたのだろう。
全体的にチーム力の向上を感じた大会となった。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_4
デザインファイナル中のJilin University [中国]
20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_8
Kasetsart University[タイ] ICVクラス総合4位でフィニッシュ

注目を集めた海外勢。
今年はICVクラスに5チーム、EVクラスに6チームが現地参加。
その高いクオリティと完成度からは、学校や国からの手厚いサポートがあるのでは?と噂されるほど。
デザイン審査のトップ2を決めるデザインファイルでは、まるで企業が行うようなプレゼンテーションを見せつけられた。
結果は両クラスとも海外勢が文句なく1位。
背景はどうあれ、それらを物にしてきた学生達の高い能力に戦慄を覚えてしまった。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_11
20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_5

前述した通り、大会ウィークは秋雨前線の真っ只中。
ちょうど東海地域がゲリラ豪雨や冠水被害を受けていた時期で、会場のある常滑市の天気予報でも、毎日雨や雷マークが乱立していた。

幸い晴れ間もあり、降り続ける事はなかったものの、5日目と最終日でその洗礼を受けた。
特に最終日は、雨だけでなく落雷注意で進行が一時中断、館内への避難を強いられる場面も。
路面もダンプ(ちょい濡れ、湿った状態)からドライ、ウェット、ダンプと変わる状況も発生したため、チームを大いに悩ませた。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_6
ICVクラスを制した京都工芸繊維大学
20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_7
EVクラスを制した名古屋大学

既報の通り、今年はICVクラス、EVクラスに分かれて総合優勝が争われたが、結果は京都工芸繊維大学がICVクラス4連覇、名古屋大学がEVクラス3連覇達成という結果に。
数字だけ見れば2チームとも変わらずの強さに感じてしまうが、今年は様相が一変。
なかなかの接戦が繰り広げられていた。

特にEVクラスの Jilin University と名古屋工業大学、ICVクラスの 同志社大学 と 大阪大学 が迫る展開で、そんな中、チャンピオン京都工芸繊維大学はエンデュランスのファイナル6に残れず、デザインファイナルにも加わる事が出来なかった。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_9
EVクラス移行から3年目で優勝候補に返り咲いた名古屋工業大学

まさかの展開もよぎる中で始まったエンデュランス。
EVクラスは 名古屋工業大学 がトップタイムで Jilin University は3番手。
名古屋大学は4番手だったが、他の審査項目でスコアを大きく伸ばしていた事により総合優勝は揺るがず。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_12
実は総合2位が目標だった同志社大学

ICVクラスでは、不調を解消した京都工芸繊維大学が圧巻のトップタイムを記録。
後は同志社大学、大阪大学の結果次第となったが、同志社大学は僅かに及ばず3番手タイム。
大阪大学は安定したラップを重ねていたものの、ドライバーチェンジした直後から無情の雨が降り出し、ここで大勢が決した。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_15
北海道大学のピット

今大会のサプライズをあげるなら、間違いなく北海道大学だろう。
2022年から総合順位を徐々に上げてきており、昨年は参加75チーム中17位と興味深い結果を出している。

そうして迎えた今大会では、なんとオートクロスでトップタイムを記録。
初のファイナル6入りで一躍ダークホースとなった。
エンデュランスでは突然の雨に見舞われ苦戦を強いられたものの、優れたマシンバランスとドライバーの頑張りで無事完走。
チーム歴代初となる、ICVクラス総合7位という結果を持ち帰った。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_13
エンデュランス再開後の北海道大学

北海道という場所柄と、そこで実走まで行えているのが1チームのみという状況下なため、本州勢に比べて多くのハンデを抱えている同チーム。
それらを覆して得た今回の結果は、北海道大学の高いチーム力を表していると言える。
と同時に、本州勢に対して言い訳できない状況を作ってしまったとも言える。

これで多くの有識者、関係者はその存在を覚えたはず。
そして多くの強豪チームがマークしてくる事は想像に難くない。
来年は、チームの真価が問われる年になるだろう。

20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_1
最後の記念撮影での一コマ
20250920_学生フォーミュラ_スカイエキスポ_セントレア_16
談笑中の同志社大学、北海道大学の両ドライバー。溜まった疲労と大役を終えた安心感からか、同志社大学のドライバーは居眠りする光景も見られた。

【取材・文】
編者(ものシンク
【取材協力】
公益社団法人 自動車技術会