
今年度、北海道大学 学生フォーミュラチームが開発した新型マシン「FH-20」は、昨年度モデルからの「大幅な軽量化」を達成し、車両運動性能を飛躍的に向上させた意欲作である。
そのポテンシャルは実走テストの数値に明確に表れている。旋回性能を測るスキッドパッドでのテストセッションにおいては、非公式ながら昨年の全国大会トップ4に食い込む「4秒台」という驚異的なタイムを記録した。さらに特筆すべきは、「担当ドライバーによるタイムのバラつきが少ない」点にある。ピーキーさを排除し、誰もが限界を引き出せる高い操縦性を実現した背景には、データと実測に基づく緻密なエンジニアリングが存在する。本稿では、新たに追加されたLSDなどの最新仕様を含め、各部門の設計思想を紐解いていく。

1. パワートレイン(エンジン・吸排気・冷却・駆動)
エンジン性能を路面へ確実に伝達するため、駆動系には新たにドレクセラ製のLSD(リミテッド・スリップ・デフ)を導入した。これに合わせてデフマウントも想定荷重から逆算して新規設計し、徹底した軽量化を図っている。
吸気系では、アクセラレーション等で効果を発揮した可変吸気システムを継続しつつ、従来32個のボルトで締結していた樹脂製インテークをカーボン製へと刷新し、大幅な軽量化と効率的な形状を実現した。
排気系(サイレンサー)もMATLABを用いた音響解析により、透過損失やグラスウール量を最適化し、消音性能と軽量化の両立を達成している。
また、オイルパンは高さを抑え壁を薄くした新規設計とし、エンジン搭載位置を下げて低重心化(マスの集中化)を促進する構造へと進化した。
2. シャシ・ボディ
ドライバーとマシンを繋ぐ骨格も、低重心化と軽量化のアプローチが顕著である。
昨年度課題であった視認性を改善すべく、ドライバーの着座位置(目線)を調整するモックアップ検証を実施した。これに伴いフレーム前部(Front Section)を小型化し、低慣性モーメント化を実現。フレーム全体の解析においては「昨年度以上の剛性を確保しつつ、1kg以上の軽量化」というシビアな目標をクリアした。
また、タイムのバラつきを抑える要因の一つとして、ドライバーの体格に完璧にフィットするウレタンシートの最適化が挙げられる。ヒューマンインターフェースの妥協なき追求が、安定したドライバビリティを生み出している。

3. サスペンション・ステアリング
昨年度のオートクロス競技で1位を獲得した優秀なサスペンション・ジオメトリをベースに、より精度の高い解析を用いたマイナーチェンジが施された。
フロント周りはフープの位置を変更し、アッパーアームに掛かる荷重の前後バランスを最適化。ベルクランクも形状変更により調整機構と剛性を向上させた。
ハブやアップライトに関しては、ベアリング荷重を用いたより現実に近いシミュレーションを活用し、大幅な軽量化を達成。また、スタビライザーは昨年の実測データを基に、降伏点を超えないよう材質変更を実施するなど、理論とデータに基づいた堅実なアプローチが貫かれている。
4. エアロダイナミクス(空力)
空力パッケージに関しては、当初「S1223」翼型を採用した新型フロントウイングや、サイド吸気を追加した新構造フロアなど全面的な刷新が計画されていた。しかし、大会までの製作スケジュールの都合により新規パーツの完成が間に合わない判断となり、本番では昨年度のエアロパーツをベースに細部をモデファイして実戦投入するアプローチへと切り替えられた。
結果として、実績のある昨年度パーツの信頼性を活かしつつ、車体全体のバランス調整を行うことで、スキッドパッド4秒台という驚異的な旋回性能をしっかりと支える空力パッケージとして機能させている。


学生フォーミュラ日本大会2026 に向けて
実は今年の6月、北海道大学で開催された学園祭「北大祭」にお邪魔してきた。
そこには学生フォーミュラチームも出展。
本番仕様のマシン展示とそのコクピット体験、学生フォーミュラのシミュレーターチャレンジに、ガソリンスタンドを模したドリンク販売といった内容で、多くの人で活気に満ちあふれていた。


大会に向けての話を伺ってみたが、昨年の実績もあってかモチベーションが高く、誰もが、マシンの仕上がりに自信を覗かせていた。
その大会だが、今年は例年より一か月早い8月開催。
間違いなく猛暑決戦となるだろう。
~ 学生フォーミュラ日本大会2026は8月2日から8月7日まで開催。会場は今年も AichiSkyExpo (愛知国際展示場) ~
チームのさらなる活躍に期待したい。
【取材・文・撮影】
ものシンク編集部
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