
人とくるまのテクノロジー展 2026 NAGOYA 取材記事。
自動車の価値がハードウェアからソフトウェアへと移行する「SDV(Software Defined Vehicle)」の時代。ソフトウェアの更新によって「車内での体験」がどう変化するのかを、開発の初期段階でいかに評価・検証するかも重要になってきている。
この課題に対する明確な解として、CRI・ミドルウェア が2026年5月に販売を開始したSDV体験価値シミュレーション「MESH(Mobility Experience Simulation Hub)」が、大きな注目を集めている。発売直後から多くの反響を呼んでいる同システムの全貌と、ドライビングシミュレータとの連携による仮想空間上での検証、そして最新のコンテンツ事例を紐解く。
発売直後から大反響。現場の要望に応える「柔軟なシステム構成」
「MESH」に対する引き合いは強く、発売直後からすでに多くの反響が寄せられている。その最大の理由は、以前から開発現場の各方面から上がっていた「リアルな体験価値を、早い段階で手軽に検証したい」という切実な要望に、システム構成が見事に応えている点にある。
同システムは単なるソフトウェアの提供にとどまらず、構想初期のコンサルティングから量産に向けた開発支援、機器の貸し出しと専任スタッフによるサポート、さらには機器販売まで、各企業のフェーズや要望に合わせて柔軟にシステム構成と導入形態をカスタマイズできる。プログラミング不要で PowerPoint 等を用いてシナリオを作成できる手軽さも相まって、開発スピードの短縮に直結する実用的なソリューションとして高く評価されている。
産学共創で挑む、SDV時代のUXシミュレーション基盤
そもそも「MESH」は、名古屋大学発の産学共創プロジェクト「Open SDV Initiative」における共同研究を経て開発された、革新的なシミュレーションシステムである。
SDV の開発において最も重要なのは、機能の羅列ではなく「ユーザーがそれをどう体験し、価値を感じるか」だ。「MESH」は、CAN通信を用いて実車と接続し、走りながらドライバー視点での検証を行うことも可能にしている。音声・映像技術に強みを持つ CRI・ミドルウェア のノウハウが組み込まれることで、メーター表示、オーディオ、車内イルミネーションなどを統合した、より高度でリッチなHMI(ヒューマンマシンインターフェース)の検証環境を実現している。
「SCANeR™ studio」連携がもたらす、仮想空間上での一括検証
「MESH」のポテンシャルをさらに引き出す要素として注目されているのが、MAC SYSTEMS(マックシステムズ)が提供する世界的なドライビングシミュレーションソフトウェア「SCANeR™ studio」との連携だ。
SCANeR™ studio は、高度な車両挙動、交通流、路面環境などをリアルに再現できる業界標準のシミュレータである。これとMESHを連携させることにより、実際の走行環境を模した「仮想空間上」で、運転時のメーター表示、効果音や音声アナウンス、UIといった車内体験を一括して検証することが可能になる。
実車や実機メーターを用意する前の超初期段階であっても、リアルな走行シチュエーションに応じたUX(ユーザーエクスペリエンス)の評価がシームレスに行えるため、手戻りの少ない効率的なSDV開発を強力に後押しする。


車内をパーソナライズする「AIラジオ」と「DMSドライブサポーター」
「MESH」上で稼働する具体的なコンテンツ事例として注目されるのが、「ずんだもん」などの人気キャラクターIPを活用した「AIラジオ」だ。AIがドライバーの好みや走行状況などのコンテキストを解釈し、キャラクターがリアルタイムに語りかけてくるような双方向のエンターテインメント空間を創出する。ソフトウェアのアップデートでキャラクターが“成長”していく、SDVならではの可能性を示している。
また、DMS(ドライバー状態監視システム)と連携した「ドライブサポーター」も見逃せない。車内カメラでドライバーのジェスチャーや疲労度を検知し、MESHを介して適切なタイミングでナビゲーションの変更や音声アラートを自動的に行う。エンターテインメントと安全機能が同じ基盤上でシームレスに機能する事実こそが、「MESH」の汎用性の高さを物語っている。
ソフトウェアとハードウェアの架け橋となる「MESH」の可能性
自動運転化が進み、車内での過ごし方が多様化していくこれからのモビリティ社会において、新しいアイデアを迅速に形にし、その価値を仮想空間や実車レベルで検証できる「MESH」のようなプラットフォームは不可欠な存在となる。
業界の切実なニーズを汲み取り、優れたドライビングシミュレータとのエコシステムも構築しつつあるこの産学共創の結晶が、次世代の車内空間をどのようにデザインしていくのか。今後のさらなる機能拡充と、自動車メーカーとの連携強化から目が離せない。
【取材・文・撮影】
ものシンク編集部
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