
人とくるまのテクノロジー展 2026 NAGOYA 取材記事。
自動車のEV化が急速に進展し、車内空間の「没入感」や「高級感」への要求度が高まる中、これまでエンジン音にかき消されていたわずかな作動音や摺動音が新たな課題として浮上している。また、省エネ・低燃費化に向けた部品の小型化・軽量化は、各駆動部への負荷をかつてないほどに高めている。
こうした次世代モビリティ特有のシビアな要求に対し、「グリース」というアプローチから確かな解決策を提示しているのがニッペコだ。同社が展開する注目の高機能グリース3製品から、最新の潤滑技術の現在地を紐解く。
異物を自ら排除し、正常な潤滑性能を保つ「異物対策グリース」
過酷な環境下で稼働する自動車部品において、砂塵や金属粉などの異物混入は潤滑不良や異音発生の直接的な原因となる。ニッペコが開発したグリース業界唯一となる「異物対策グリース」は、特殊添加剤の働きにより潤滑面から異物を自ら捕集し、除去するという画期的なメカニズムを持つ。
パワーウインドウやサンルーフ、シート周り部品などへの適用が想定されており、砂塵が2%混入した状態のテストにおいても、異音の発生を防ぎ、低摩擦かつ静音を維持できることが実証されている。中東やインド地域など、砂塵が舞う過酷な環境下ですでに採用実績がある点も、その高い信頼性を裏付けている。
音の種類を分析し、ピンポイントで封じ込める「異音対策(静音)グリース」
EV化の進行、アクチュエーターの使用箇所の増加、さらなる没入感と高級感に対する要求の高まりにより、これまで以上に不快な作動音の抑制を急務としている。
その解決にニッペコでは、対象に合わせた粘度や成分の違う専用のグリースを開発。
塗布する事で、ドアや内装部品などから発せられる耳障りな音を確実に抑制する。

過酷なダウンサイジングの弊害を克服する「摺動音対策グリース(高面圧)」
自動車部品の小型化はスペース効率や軽量化に寄与する反面、駆動部が「高面圧化」するという物理的なハードルを生み出す。従来品のグリースでは高面圧に耐えきれず油膜切れを起こし、摩擦係数の増大とそれに伴う摺動音が発生してしまうのだ。
この課題に対し、高面圧条件での摩擦低減および摺動音対策に特化して開発されたのが本製品。14MPaという高い面圧がかかる樹脂・金属間の摺動テストにおいても、見事に摩擦を低減させ、耳障りな音の発生を抑制することに成功している。設計の自由度を保ちながら、小型化と静粛性を両立させるための切り札と言えるだろう。
今後に向けての考察
異物の自律的な排除、緻密な異音の抑制、そして高面圧下での確実な潤滑。ニッペコが展開するこれらのグリース技術は、単なる部品の延命措置にとどまらない。
例えば将来、カーシェアリングやMaaSを前提とした「365日稼働し続ける完全自動運転車」が普及した社会において、車両のダウンタイム(稼働停止時間)削減は事業の根幹を揺るがす命題となる。人の手を介さずに長期間正常な状態を維持する「メンテナンスフリー」に近い耐久性が足回りや駆動部に求められる中、これらの高機能グリースの進化は、次世代モビリティの社会実装を裏側から力強く推し進めるコア技術となっていくはずだ。
【取材・文・撮影】
ものシンク編集部
現役ITエンジニアの視点から、日本の「ものづくり」と「インフラ」の最前線を独自の切り口で紐解くWebメディア。
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(株)ニッペコ
公益社団法人自動車技術会